「再雇用後は別職種へ」不当な業務内容を提示~違法判決

  定年退職後の再雇用の職種として事務職者に対し清掃業務を提示したのは不当だとして、事務職としての地位確認と賃金支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は「まったく別の職種を提示したことは継続雇用の実質を欠き、通常解雇と新規採用に当たる」と判断。

 改正高年齢者雇用安定法の趣旨に反し違法だとして企業に約127万円の賠償を命じた。

 高齢者の継続雇用をめぐる裁判で企業の賠償責任が認められるのは異例。

2016-10-05

2016年 9月 ニュースレター

 9月 ニュースレター

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 育児休業取得者の割合と男性の育休取得で受給できる新設助成金

 人手不足が進む介護事業所における職員の不満の内容は?

 雇用均等基本調査にみる「女性管理職」登用の実態

 平成27年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました

 自動車運転者に関する「相互通報制度」の改正について

 厚労省調査結果にみる「労使間の交渉」の実態

「高年齢者の労働災害」を未然防止するための対策

 夏場における職場のエアコン使用と適切な設定温度

 メタボ健診で「正常レベル」の人は2割未満

 2018年春入社の採用活動日程と最近のインターンシップの動向

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育児休業取得者の割合と男性の育休取得で受給できる新設助成金

◆ 男女別の育児休業取得率は?  厚生労働省から「平成27年度 雇用均等基本調査」の結果が公表され、育児休業の取得者割合(取得率)が明らかになりました。 続きを読む

2016-09-27

過労でうつ病、東芝に6千万円賠償命令 東京高裁

 長時間労働で鬱病になり、東芝を解雇された元社員、重光由美さん(50)=埼玉県深谷市=が約1億円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し判決で東京高裁(奥田正昭裁判長)は31日、差し戻し前から賠償額を増額し、東芝に計約6千万円の支払いを命じた。

 差し戻し前の東京高裁判決は、神経科への通院などを早く申告していれば、東芝が悪化を防ぐ措置ができたと判断したが、最高裁は「申告がなくても会社は労働者の健康に配慮する必要がある」として差し戻していた。

 今回の判決は重光さんの過失を否定し、差し戻し前の判決が320万円とした慰謝料を400万円に増額。そのほか、東芝が過重な労働を軽減しなかったことに基づく休業損害などを認めた。

 判決によると、重光さんは深谷市の工場で液晶生産ラインの開発などを担当。平成13年4月に鬱病を発症して10月から欠勤し、16年9月に解雇された。(共同通信)

2016-09-06

コンビニ店長自殺は労災認定 遺族が逆転勝訴 東京高裁

 東京都内のコンビニで店長を務めていた男性=当時(31)=が自殺したのは過重労働が原因だとして、遺族が労災と認めなかった三田労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(高野伸裁判長)は1日、訴えを退けた一審東京地裁判決を取り消し、労災と認定した。 続きを読む

2016-09-05

8月 ニュースレター

2016.8月 ニュースレター

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 解雇」をめぐる訴訟・労働審判の特徴と解決金決定の判断要素

「介護休業」取得の判断基準を緩和へ

 経団連が「同一労働同一賃金」で提言 その影響は?

 就業規則に「懲戒処分」明記も!企業に求められる「マタハラ」防止対策

「求人が充足されやすい企業」の特徴とは?

 調査結果にみる中小企業の「人手不足」への対応と課題

7月から施行される「中小企業等経営強化法」のポイント

 中小企業にも広がる「クラウド・コンピューティング」

 10月から社会保険の加入対象者が拡大します!

 2016年の「賃上げ」に関する状況は?

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「解雇」をめぐる訴訟・労働審判の特徴と解決金決定の判断要素

◆ 元裁判官の視点

 従業員を解雇した場合、最終的には「労働審判」や「訴訟」に持ち込まれるケースがありますが、裁判官は解雇事案をどのように見ているのでしょうか?

 今年4月に開催された厚生労働省の会合(透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会)において、裁判官として36年の経験を持つ難波孝一氏(現在は弁護士)が解雇事案の傾向等について語った内容が同省のホームページで公開されていますので、その内容を一部抜粋してご紹介いたします。

◆ 訴訟における解雇事案の特徴

 まず、訴訟の解雇事案では、労働者は会社で働くことを求めている事案が多く、「地位確認」を求めてくる事案が多いそうです。

 中には、地位確認と言いながらも、すでに別な会社で働いており「果たしてこの労働者は本当に現職復帰を考えているのか?」と思う事案もあったそうですが、大多数のケースでは労働者は会社で働くことを求めている事案が多いようです。

◆ 労働審判における解雇事案の特徴

 一方、労働審判の解雇事案では、労働者は会社を辞めることを念頭に置きながら、金銭解決を求めてくる事件が大多数だそうです。

 そのため、会社で働くことを希望する労働者は、労働審判ではなくて仮処分で地位確認を求めることが多いようです。

◆ 解雇における解決金の判断要素

 解雇事案では、最終的に解決金の支払いにより和解となるケースが多いですが、解決金額の判断要素にはどのようなものがあるでしょうか?

 この点、難波氏によると、「解雇が有効か無効かの確度」、つまり訴訟であれば裁判官の心証、労働審判であれば委員会における心証が最大の判断要素になるとのことです。

 また、「会社や労働者の経済状況」や、「会社がその労働者に辞めてもらいたい気持ちの強さ」、「労働者がその会社にずっと勤務して頑張りたいと思っている気持ちの強さ」といった点も影響し、さらには「解決に要する期間が今後どのぐらいかかるか」、「労働者の在職期間がどのくらいか」といったこと等も含め、総合的に判断されるようです。

「介護休業」取得の判断基準を緩和へ

◆ 企業も労働者も悩む「仕事と介護の両立」問題

 介護休業制度は、家族を介護している労働者が最長93日間取得することができ、その間、介護休業給付として休業前賃金の40%相当額を受け取ることができます。

 要件を満たす非正規労働者も取得できますが、取得割合は約16%にとどまり、年間約10万人「介護離職」をしていると言われ、制度が十分に機能していないという問題があります。

◆ 介護休業制度をめぐる法改正

 介護離職者には企業の中核を担う40~50歳代の人も多いことから、制度を活用しやすくするための改正案が今年の通常国会で成立し、来年1月1日から施行されることとなりました。

 主な改正点は、(1)最大3分割で取得可能(上限93日間)、(2)祖父母や兄弟姉妹のための介護休業の同居要件廃止、(3)介護休業給付金の支給率を67%にアップです。

◆ 取得できる基準の緩和でより取得しやすく

 上記改正法の施行に合わせて、厚生労働省は、介護休業の取得基準を緩和する方針を決めました。現行基準は特別養護老人ホームへの入所が必要かどうか(要介護2~3程度)が目安となっていましたが、介護認定と連携していないためわかりにくいという声もあり、介護休業の利用低迷の一因ともなっていました。

 新基準では、要介護2以上なら休業を取得できることが明記され、要介護1以下でも、見守りの必要度に応じて休業が取得できるようになります。

◆ 就業規則、育児・介護休業規程の整備が必要

 上記の通り、介護休業制度については来年1月1日から施行される改正法の影響もあり、企業は就業規則や育児・介護休業規程の見直しが必要となります。

 また、取得基準の緩和により、取得の可否に関する相談や取得希望者が増えることが予想されますので、情報提供や相談対応ができるようにしておく必要があります。

 2016年中の対応が求められる事項ですので、漏れのない準備を進めましょう。

経団連が「同一労働同一賃金」で提言 その影響は?

◆ 具体案を公表

 経団連は、政府が検討を進めている「同一労働同一賃金」についての提言をまとめたそうです。

 これによると、法改正にあたっては、日本の雇用慣行や賃金体系に留意した制度の構築が望ましいとし、国内経済の好循環を実現するため、正社員化の一層の推進など、非正規労働者に対する幅広い処遇改善を進める必要性を指摘しているとのことです。

◆ 提言の骨子

 上記提言のポイントは以下の通りです。

 ○ 職務給を前提とした欧州型の導入は困難で、日本の雇用慣行に合わせた仕組みづくりが必要。

 ○ 職務内容だけでなく、勤務地や職種の変更といった様々な要素を総合的に考えて同一労働かどうか評価すべき。

 ○ 非正規労働者への賃金制度の説明の充実が必要。

 ○ 正社員化や教育訓練の充実など、総合的な処遇改善を進めるべき。

◆ 日本の実態に即した制度を

 同一労働同一賃金に関しては、欧州各国ではすでに、仕事の内容に応じて賃金が決まる「職務給」が設定され、広く定着しています。

 しかし日本では、経験や能力に応じた「職能給」や、勤続年数や年齢に応じた「年齢・勤続給」などで基本給を決めている企業が多数です。

 そこで経団連は、「職務内容だけでなく、勤務地や職種の変更の可能性などを含めた人材活用の仕方など、様々な要素を総合的に勘案して同一の労働に当たるかどうか評価することを基本とすべき」と主張し、日本の実態に即した制度の実現を求めています。

◆ 政府のガイドラインや法改正への反映も

 同一労働同一賃金は、安倍首相が今年1月に「1億総活躍社会」の柱として打ち出したもので、労働者の約4割を占める非正規労働者の処遇を改善し、格差是正や消費拡大につなげる狙いがあります。

 一方で経済界には、人件費の増加につながるとの警戒感も出ています。提言では、政府が年内をめどに策定するガイドラインについても言及し、「明確に不合理と(各企業の労使が)認識できる事例を例示すべきだ」として、点検や改善に役立つ指針の策定を求めています。

 政府は、早ければ来年にも労働者派遣法など関連法の改正案を国会に提出する方針で、今後、厚生労働省の審議会で法制化に向けた議論に入る予定ですが、経団連は今回の提言を制度設計に反映するよう求めています。

就業規則に「懲戒処分」明記も!企業に求められる「マタハラ」防止対策

◆ 就業規則に「マタハラ懲戒」

 厚生労働省は、妊娠や出産を理由とした職場における嫌がらせを意味する「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」の防止対策の1つとして、企業が対処方針を就業規則などに明記し、加害者を懲戒処分とすることなどを求める指針案を示しました。

 この指針は今年3月に成立した改正男女雇用機会均等法などに基づくもので、来年1月の施行に合わせて運用が始まる予定です。

◆ マタハラ・育休に関する相談が増加

 2015年度に全国の労働局の雇用均等室に寄せられたマタハラに関する相談件数が4,762件となり、過去最多を2年連続で更新しました。4,000件を超えたのは初めてのことです。

 相談内容で最も多かったのが、「婚姻や妊娠、出産を理由とした不利益取扱い」で2,650件(前年比17.7ポイント増)、次いで「育児休業での不利益取扱い」が1,619件(同20.8ポイント増)となっています。

 近年、マタハラが社会問題化しており、認知が広がっていることも影響しているようです。

◆ 解釈通達も確認を

 妊娠を理由とした降格が男女雇用機会均等法に違反するとした2014年10月の最高裁判決を受け、厚生労働省は「妊娠・出産・育児休業等の事由を『契機として』不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産・育休等を『理由として』不利益取扱いがなされたと解され、法違反」とする通知を労働局に出しています。

 これに関しては、同省から「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」が出ていますので確認しておきましょう。

◆ 就業規則の確認、防止体制の整備を

 冒頭で述べたとおり、厚生労働省の指針案では就業規則等に「懲戒処分」に関する規定を盛り込むことで、加害者に対して厳しく処分することを求めています。

 この他にも、マタハラ防止のための周知・啓発や相談体制の整備、再発防止策などを求めていますので、企業としては、今一度しっかりと自社の就業規則、マタハラ防止体制などを確認しておくことが必要です。

「求人が充足されやすい企業」の特徴とは?

◆ 雇用管理改善の取組みが業績の向上に

 厚生労働省の「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」(実施は三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の調査結果が公表されました。

 この調査は、「近年、景気の緩やかな回復基調に伴い、有効求人倍率が上昇傾向にある中において、特に中小企業の多くで人手不足が常態化することが予想される。では、今後どういった企業の求人が充足されやすいのか」という視点から、企業が労働条件や職場環境等の改善に取り組むことと、労働生産性や業績の向上との関連性を調べたものです。

◆ 重要なポイントは?

 雇用管理改善の取組み(評価・キャリア支援、ワーク・ライフ・バランス、女性活用、ビジョン共有・トラブル解決の仕組み等の人材マネジメントなど)は、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながるとの結果が出ていますが、調査結果からは以下の点が重要だということが明らかになりました。

(1)「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視する

 経営方針として、これらの両方を追求するほうが、効果が高いとのことです。また、「顧客満足度」を重視する企業は多いですが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くなく、経営者はこれら両方を経営方針に据え、従業員に浸透させることが望ましいとされています。

(2)雇用管理改善に継続的に取り組む

 「10年以上前から行っている」など早期に取り組んできた企業で人事目標の達成度合いが高いことから、雇用管理改善が効果を現すにはある程度の時間が必要なことがうかがえます。 また、こうした早期から取り組む企業では正社員が「量・質ともに確保できている」とする割合が高く、人材が確保にも好影響を与えているようです。

(3)表彰・認定には取組みを推進する効果

 行政による様々な企業の表彰・認定制度があり、これらの利用が効果的とのことです。

◆ 若者の定着にも効果あり

 改善の取組みの中でも、労働時間の短縮や有給休暇取得促進、働きやすい職場づくりなどは、特に若者の定着に効果があるとの回答が多かったそうです。

 また、若手が相談しやすい・意見を言えるような仕組みや、賃金・評価制度の見直しも効果があったとの回答も複数あったそうです。

 しかし、こうした改善はやみくもに取り組めばよいものではなく、目標を設定し計画的に取り組み、それを社外に積極的に情報発信することの必要性も指摘されています。5年後、10年後の自社の在りたい姿を描きながら一歩ずつ進めていく必要があります。

調査結果にみる中小企業の「人手不足」への対応と課題

◆ 中小企業へのアンケート調査

 日本商工会議所から6月下旬に「人手不足等への対応に関する調査」の集計結果が公表されました(調査対象:中小企業4,072社、回答企業:2,405社)。

 企業における人員の過不足状況や求める人材、女性の活躍推進をはじめとする人手不足対応への取組み状況等について知ることができます。

◆ 半数以上の企業が人手不足に!

 まず、「人員が不足している」と回答した企業は55.6%(平成27年調査50.3%)、「過不足はない」と回答した企業は39.7%(同45.5%)となっています。

 全体の半数以上の企業で人手不足が生じており、昨年調査よりもその割合が約5%上昇していることから、その傾向が強まっている状況です。

 業種別にみると、「宿泊・飲食業」(79.8%)で不足感が最も高く、「介護・看護」(77.5%)、「運輸業」(72.3%)、「建設業」(63.3%)と続いています。

◆ 企業が求める人材とは?

 また、「人員が不足している」と回答した企業の69%が、求める人材として「一定のキャリアを積んだミドル人材」と回答しています。

 ただ、その他の項目(「高卒社員」「大卒社員」「管理職経験者等シニア人材」)においても、前年調査と比較して高い数値となっており、幅広い層で人手不足が広がっている状況です。

◆ 人手不足への対応と課題

 人手不足への対応として、女性や高齢者など幅広い人材の活用等が求められていますが、本調査では実際の企業の取組状況を知ることができます。

 女性の活躍推進については、「実施している」が40.0%、「実施を検討している」が21.5%となり、6割を超える企業で何らかのアクションを起こしています。

 女性の活躍を推進するうえでの課題としては、「女性の職域が限定されている」(38.6%)が最も高く、「女性の応募が少ない(女性社員が少ない)」(31.7%)、「女性が管理職登用を望んでいない」(23.0%)が続いています。

 65歳以降の雇用延長については、すでに65歳超の者を雇用している企業は回答企業の約7割となっているものの、65歳以降の雇用延長について「義務化は反対」(30.1%)、「65歳までは雇用できるがそれ以上の対応は難しい」(27.1%)といった意見も出ています。

 65歳超まで雇用できない理由として、「本人の体力的な面で難しい」(66.5%)、「若い年齢層の採用の阻害になる」(47.6%)、「生産性が低下する」(37.3%)、「雇用し続ける余裕(人件費等)がない」(22.7%)といった回答がありました。

7月から施行される「中小企業等経営強化法」のポイント

◆「中小企業等経営強化法」とは?

 労働人口の減少、企業間の国際競争の激化等の経済社会情勢の変化に対応し、中小企業・小規模事業者等の経営強化を図るため、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」の一部を改正したものが「中小企業等経営強化法」です。

 事業者は、事業分野別の指針を踏まえて「経営力向上計画」を策定し、各事業所管大臣の認定を受けることにより税制や金融支援等の措置を受けることができます。法律の具体的な内容は以下の通りです。

◆ 固定資産税の軽減措置

 認定を受けた中小企業は、新たに導入する価格160万円以上の機械装置(生産性が1%以上向上することが条件)を取得した場合の固定資産税(償却資産税)を3年間、2分の1に軽減することができます。

 適用期間は平成30年末までで、それまでに取得した機械装置につき、次年度から3年間となります。

◆ 各種金融支援措置

 また、中小企業は認定を受けることにより、商工中金の低金利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等による円滑な資金調達が可能となります。

 そのほか、日本政策金融金庫では、海外支店や現地法人が海外の金融機関から現地流通通貨建てを受ける際に、1法人あたり最大4億5,000万円の保証や、食品製造業向けの食品流通構造改善機構による保証も受けることができます。

◆「経営力向上計画」の策定

 経営力向上計画の申請書類は実質2枚です。

 企業の概要、現状認識、経営力向上の目標および経営力向上による向上の程度を示す指標、経営力向上の内容など簡単な計画等を策定することにより、認定を受けることができます。

 中小企業庁のホームページで公表されている事業分野別指針を参考にしながら記載する必要があります。

中小企業にも広がる「クラウド・コンピューティング」

◆ 増え続ける利用割合

 クラウド・コンピューティングを利用する中小企業が増えています。

 中小企業庁「2016年版 中小企業白書」によると、2009年に6.8%だった中小企業の利用割合は、2013年には27.3%となり、その後も増え続けています。

 ちなみに大企業では、2013年時点ですでに半数近くが利用しています。

◆「クラウド・コンピューティング」のメリット

 クラウド・コンピューティングとは、ネットワークから提供される情報処理サービスのことで、手元のコンピュータで管理・利用していたようなソフトウェアやデータ等をインターネット等のネットワークを通じてサービスの形で必要に応じて利用する方式のことを言います。

 従来、IT化は、時間・費用等の投資コストがかかるものでしたが、クラウド・コンピューティングには、導入までの期間の短さや、初期コスト・運用コストの安さ、専門知識が不要であることなどといったメリットがあります。

◆ 様々な目的で利用されているクラウド・コンピューティング

 中小企業庁が実施した先行企業のアンケート調査結果(2015年)によれば、クラウド・コンピューティングの利用により得られる効果として、以下のことが挙げられています。

 ○「社内の情報活用の活発化」

 ○「リスク対応・セキュリティ対策」

 ○「業務プロセス合理化・意思決定の迅速化」

 利用の中心はバックオフィス業務ですが、営業・販売力の向上や売上拡大、在庫圧縮・省材料化なども挙げられており、様々な目的で利用されていることが見てとれます。

 中小企業庁では中小企業におけるクラウド・コンピューティングの重要度は今後ますます高まるものと位置付けています。

 サービスも多様化し、活用方法の幅も広がっていますので、一度、利用を検討してみてもよいかもしれません。

10月から社会保険の加入対象者が拡大します!

◆ 大企業のパート労働者にも適用へ

 今年10月から、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象者が広がります。

 現在は、一般的に週30時間以上働く人が社会保険の加入対象となっていますが、10月からは従業員501人以上の企業において週20時間以上働く人などにも対象が拡大されます。

 なお、平成31年以降は従業員500人以下の事業所も適用予定です。

◆ 加入・適用のメリットは?

(1)将来もらえる年金が増える。

(2)障害がある状態になり日常生活を送ることが困難になった場合なども、より多くの年金がもらえる。

(3)医療保険(健康保険)の給付も充実する。

(4)自身で国民年金保険料・国民健康保険料を支払っている場合は現状より保険料が安くなることがある。

◆ 新たに加入することになる対象者とは?

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上

(2)月額賃金が88,000円以上(年収106万円以上/残業代や交通費などは含まない)

(3)継続して1年以上雇用されることが見込まれている

◆ 助成金の活用も視野に

 社会保険の適用拡大は、従業員だけでなく事業主の負担も増えることになります。

 したがって、仕事内容を見直したり、人員削減や配置換えを考えたりする必要が出てくるケースもありますが、それと並行して助成金の活用も視野に入れるとよいでしょう。

 平成28年4月から、キャリアアップ助成金が拡充されています。従業員の所定労働時間を「週25時間未満」から「週30時間以上」に延長し、厚生年金保険などの被用者保険を適用した事業主に対し、労働者1人あたり20万円(大企業は15万円)が助成されます。

 なお、10月以降は、労働者の所定労働時間を5時間以上延長し、厚生年金保険などの適用対象とした場合に助成(助成額は同額)されます。

2016年の「賃上げ」に関する状況は?

◆ 賃上げの波は続いている

 景気の不透明感が叫ばれている中、企業の賃上げの動きは継続中のようです。

 株式会社東京商工リサーチが今年5~6月に実施した2016年の賃上げ状況に関するアンケート調査(有効回答8,097社)によると、今年、賃上げを実施した企業が6,483社と約8割を占めたそうです。

 賃上げの実施方法としては「定期昇給のみ」が最多で37.0%、「定期昇給+賞与・一時金の増額」が11.2%、「ベースアップのみ」が10.1%となっています。

 賃上げ幅としては「月2,500円未満(年3万円未満)」がほぼ半数を占めています。

◆ 人材確保のために中小企業でも実施

 上記調査では、賃上げの理由についても質問しており、「従業員の定着・確保を図るため」との回答が約7割を占めたそうです。

 回答した企業の資本金別でみると、資本金1億円以上が55.3%(1,579社中873社)だったのに対し、1億円未満は71.9%(4,904社中3,526社)となっています。

 中小企業ほど人材確保のための措置として賃上げを実施している実態がわかります。

◆ 人材確保面で格差が広がる可能性

 賃上げの実施は、実際に人材確保に影響を与えているのでしょうか。

 株式会社マイナビが運営する「マイナビ転職」が実施した「2016年ベースアップの実態と転職意識調査」によれば、ベースアップ(ベア)の有無やその金額が転職意向に与えた影響について、「(べアが)想定より多かった」層のうち、「転職意向は弱くなった」との回答が25.0%(前年比10.8ポイント増)で、前年より増加したそうです。

 賃上げには転職意向を弱める効果が少なからずあることがうかがえます。

 一方、賃上げを実施しない(実施しない)企業の理由としては「業績不振」が大きな理由になるところだと思いますが、人材確保への投資が不十分となると、人手不足によりますます業績にマイナスの影響が及ぶ可能性も指摘されています。

◆ 賃上げ以外のアピールも必要に

 人材流出回避のためには、他社の動向も注視しながら、会社の資力を考慮したうえでの賃上げの実施は有効です。一方で、賃上げを実施しない企業にとっては、他社から取り残されないためにも給与面以外(働きやすさ、職場の風通しの良さ等)のアピールも検討すべきでしょう。

2016-09-05

7月 ニュースレター

2016年7月 ニュースレター

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■ セクハラ指針の一部改正で「LGBT」に関する内容が明記されます!

■ 厚労省の調査結果にみる「障害者の就労」の実態

■ 「改正確定拠出年金法」成立!加入対象者が大幅に拡大

■ 企業にとってのメリットは?「法人番号」の利活用

■ 「定年後再雇用と処遇」をめぐる東京地裁判決 労働契約法20条違反!

■ トラブルの多い「求人票への虚偽記載」で懲役刑を検討

■ 「下請保護情報ネットワーク」拡充による長時間労働対策の強化

■ 相談件数が過去最多!「若年性認知症」と就労継続支援

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セクハラ指針の一部改正で「LGBT」に関する内容が明記されます!

◆ 企業に求められるLGBT対応

近年、人権保護の観点からはもちろん、リスク対応や優秀な人材の確保といった観点から、企業においてもLGBTへの理解と対応が求められてきています。

ここでいう「LGBT」とは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)といった性的少数者のことであり、2015年に電通総研が行った調査では、人口の7.6%がLGBTであると発表されています。

そのよう中、厚生労働省は、いわゆる「セクハラ指針」(事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上構ずべき措置について)の改正を行い、企業にLGBTなどの性的少数者へのセクハラにも対応する義務があることを明文化する方針を固めました。

◆ 職場におけるセクシュアルハラスメントの対象者の明確化

 労働政策審議会(雇用均等分科会)の中で示された「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針の一部を改正する告示案」では、「従来より、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、被害者の性的指向や性自認は問わないものであるが、それが周知徹底されていないとの声が近年多くなっている。これを踏まえて、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、これらの者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、セクハラ指針の対象となる旨を明確化する改正を行うこととする。」とされました。

現在でも性的少数者は指針の対象となっていますが、明文化はされていませんでした。

セクハラ指針の2(1)に、「被害を受けた者の性的指向や性自認にかかわらず対象となる」と新たに明記することで、さらなる周知徹底を図るねらいがあるようです。

◆ 施行日について

上記指針は平成29年1月1日より改正される予定ですので、社内のセクシュアルハラスメント防止規程の見直しや社員への周知等、LGBT対応が必要になってきます。

厚労省の調査結果にみる「障害者の就労」の実態

◆ 障害者の就職者数が過去最高を更新

厚生労働省が「平成27年度 障害者の職業紹介状況等」を公表し、ハローワークを通じて就職した障害者が9万191人(前年度比6.6%増)と7年連続で増加し、過去最高を更新したことがわかりました。

また、就職率(就職件数/新規求職申込件数)も48.2%(同1.0%増)と上昇しました。

◆ 精神障害者の就職件数が大幅増加

 就職者の内訳をみると、精神障害者が3万8,396人(同11.2%増)、身体障害者が2万8,003人(同0.6%減)、知的障害者が1万9,958人(同6.6%増)、発達障害者などは3,834人(同21.1%増)となっており、精神障害者の就職件数が大幅に増加しています。

この理由として、昨年4月より法定雇用率(2.0%)を達成していない場合に納付金を徴収する企業の対象が従業員200人超から100人超に対象が拡大したこと、平成30年度には障害者雇用促進法の改正に伴い精神障害者を法定雇用率の算定対象に含めることが挙げられます。

◆ 医療・福祉や製造業への就職が多い

 調査結果を産業別にみると、「医療・福祉」への就職者が最も多く3万3,805人(37.5%)、2番目は「製造業」の1万1,933人(13.2%)、3番目は「卸売・小売業」の1万1,577人(12.8%)となっています。さらに「サービス業」、「運輸、郵便業」と続いています。

また、職業別では、「運輸・清掃・包装等の職業」が3万1,393人(34.8%)で最も多く、以下、「事務的職業」(1万8,469人、20.5%)、「生産工程の職業」(1万1,599人、12.9%)、「サービスの職業」(1万819人、12.0%)となっています。

◆ 企業の理解や雇用環境の改善が必要

 厚生労働省では、「好調な雇用状況を背景に障害者の求職意欲は増しているため、企業の理解をさらに進めるとともに、障害者が働きやすいよう雇用環境の改善を図りたい」としています。

また、法定雇用率未達成企業の民間企業に対して達成を実現させるよう指導を行い、関係機関と連携して障害者雇用のための支援を行うとしています。

「改正確定拠出年金法」成立!加入対象者が大幅に拡大

◆ 来年1月から施行へ

確定拠出年金法等の改正案が5月24日に成立しました。

これにより、来年1月から専業主婦を含めたすべての現役世代が実質的に加入できることとなり、新たに加入対象となる公務員や主婦らの取込みに向け、金融機関等の動きも活発化しています。

◆ 「個人型」の対象が大幅拡大

 確定拠出年金には、会社単位で入る「企業型」と個人で入る「個人型」があります。

今回の改正により加入対象が広がるのは「個人型」です。これまでは自営業者や企業年金がない会社の社員らが対象でしたが、主婦や公務員が加わるほか、すでに企業年金に入っている会社員も併用して使えるようになります。

これにより、これまで約4,000万人に限られていた加入対象者は約6,700万人に拡大し、低所得で国民年金の保険料が免除される人たちを除いてすべての成人が加入できるようになります。

◆ 税制上のメリット

確定拠出年金では運用益が非課税となるほか、掛け金の全額が課税対象の所得から差し引かれるため、そのぶん所得税や住民税も安くなります。

今回の改正により、主婦と公務員だけでも最大400万人が個人型に入るとみられ、実際の加入者も現在の約500万人から約2倍に膨らむと言われています。

◆ 企業型の加入者に最大の恩恵

また、掛け金は多いほど有利になるので、今回の改正で最もメリットが大きいのは「すでに企業型を利用している人」と言われています。

所得税を納めていない主婦等の恩恵は運用益が非課税になるだけですが、企業型の加入者は個人型を上乗せして掛け金を増やせば、一段の節税効果も期待できるからです。

◆ 「自助努力」「リスク把握」も必要

一方、確定拠出年金は公的年金とは違い、加入の判断や運用する掛け金の額、運用商品を個人が判断し、運用次第で将来の年金額が変わります。運用成績が悪ければ受け取れる年金が掛け金の総額を下回るリスクもあり、加入者自身が知識をもって自助努力を行う必要があります。

また、運用資金に余裕がある人と運用資金を準備できない低所得者との年金格差が広がる可能性も指摘されており、今後の課題と言えます。

企業にとってのメリットは?「法人番号」の利活用

◆ 13桁の番号

株式会社や社団法人、協同組合等、設立の登記を行った法人や国の機関・地方公共団体などに、13桁の法人番号が指定される「法人番号制度」が平成28年1月よりスタートしています。

個人番号とは異なり、誰でも利用することが可能な法人番号について、先般、国税庁より番号の調べ方や売掛金管理での活用方法等を紹介するリーフレットが公表されました。

◆ 法人番号公表サイトとは?

「国税庁法人番号公表サイト」(http://www.houjin-bangou.nta.go.jp)では、「法人番号」「商号または名称」「所在地」などから、法人等の基本3情報(商号または名称・所在地・法人番号)を検索することができます。

◆ 法人番号の活用方法

(1)取引先情報等の入力補助による効率化

ダウンロードデータ等を活用することで、法人番号だけ入力すれば「法人番号公表サイト」で公表している「法人名」「本店所在地」の情報を自動的に補完入力する機能を追加することができます。これにより、誤入力等による問題が解消できるほか、入力作業の効率化にもなります。

(2)売掛金管理等、会計業務の効率化・自動化

法人番号付きで売掛金(売上台帳)の管理を行うと、法人番号をキーに取引先ごとの集計が容易になります。また、支店・出張所との取引であっても、本店と同一の法人番号であることから、取引先ごとの集計を確実に行うことができます。

◆ 国際的に利用可能な企業コードとしての法人番号

(1)電子商取引での活用例

各企業が、発番機関コードに法人番号を付加したものを共通の企業コードとして活用することで、各企業システム間のコード変換作業が不要となり、全体のコスト削減を実現することができます。

(2)電子タグの活用例

電子タグについては、出荷品や在庫などに、「カード型」「ラベル型」「ボタン型」「スティック型」など、様々な形状の電子タグを取り付けて無線で読み取ることで、在庫や場所を把握する技術が普及してきています。この電子タグに統一された企業コードを記録することで、物流の効率化や、電子タグの普及にもつながることが期待されています。

「定年後再雇用と処遇」をめぐる東京地裁判決 労働契約法20条違反!

◆ 会社に賃金差額の支払いを命じる判決

新聞報道等ですでにご存じの方も多いと思いますが、5月13日に東京地裁から「定年後再雇用と処遇(賃金)」についてこれまでの“常識”を覆す判決が出ました。

判決の趣旨は「定年後に嘱託社員として再雇用された3人の労働者(トラックドライバー)の職務内容が定年前と変わらないにもかかわらず、会社(運送会社)が賃金を約3割引き下げたことは違法(労働契約法20条違反)である」というもので、会社には賃金の差額の支払いなどが命じられました。

◆ 判決に対する評価

上記のような賃金格差について労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)の違反を認めた判決は過去に例がなく、労働者側の弁護士は「通常の労働者と定年後再雇用された労働者との不合理な格差是正に大きな影響を与える画期的な判決である」と評価しています。

また、原告の1人は「同じような立場の人にこの判決が力となれば」と話しているそうです。

◆ 今後の企業実務への影響は?

判決後、会社側はすぐに控訴したため、裁判における最終的な結論がどのようになるかは現時点ではわかりませんが、仮にこの判決(=労働者側の勝訴)が高裁・最高裁で維持された場合、定年後再雇用者の賃金引下げは認められなくなるケースが出てくる可能性があり、企業実務への影響は非常に大きなものとなります。

今後の裁判で裁判官がどのような判断を下すのか(裁判がどのような結論となるのか)について、注視しておく必要があるでしょう。

【参考条文】労働契約法第20条

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

トラブルの多い「求人票への虚偽記載」で懲役刑を検討

◆ 法改正へ向けて秋以降に本格議論

厚生労働省の有識者検討会が、ハローワークや民間の職業紹介事業者に、労働条件を偽って求人を出した企業とその幹部に対する罰則を設けるべきとする報告書をまとめました。

この罰則には懲役刑も含むものとされており、また、これまで規制のなかった求人情報提供事業者(求人雑誌等)についても、労働条件の明示義務等のルールを定めることが必要だとされています。

現在、企業が自社のホームページ等で虚偽の労働条件を掲載し、直接採用した場合には罰則(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)の適用がありますが、ハローワーク等に虚偽の求人を出しても罰則はありません(ただし、是正指導が行われることはあります)。

今秋以降の労働政策審議会で議論され、職業安定法の改正が行われるようですので、注目しておきましょう。

◆ トラブルは増加傾向にある

厚生労働省のまとめによると、ハローワークの求人票に関する苦情・相談は、平成27年度は1万937件と、前年度よりは10%ほど減少しましたが、調査が始まった平成24年度の調査開始からみると増加傾向にあり、内容としては「賃金」「就業時間」「職種・仕事内容」をめぐるトラブルが多くなっています。

また、「求人票の内容が実際の労働条件と異なる」ことを要因とした相談等は3,926件(36%)あり、次いで「求人者の説明不足」が2,540件(23%)で、これらで約6割を占めています。中には、こうしたトラブルが訴訟に発展するケースもあるようです。

◆ 求人申込書の記載にあたっての注意点

求人票やハローワークのインターネットサイトに掲載される情報のもととなる「求人申込書」の記載については、別の注意点もあります。全般的な書き方については冊子でまとめられていますが、これとは別にこのほど「固定残業代の表示」に関するパンフレットが公表されました。

求人申込書の賃金欄について 、固定残業代制を採用する場合は「固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法」、「固定残業代を除外した基本給の額」、「固定残業時間を超える時間外労働」、「休日労働および深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと」などを明示することが必要であり、基本給には固定残業代などの各種手当は含めない等の留意点が記載されています。

意図せずにブラック企業とのレッテルを貼られることのないよう求人情報の記載には注意が必要です。

「下請保護情報ネットワーク」拡充による長時間労働対策の強化

◆ 「下請保護情報ネットワーク」とは?

厚生労働省、経済産業省、公正取引委員会では、平成20年より「下請保護情報ネットワーク」を構築し、労働基準監督署(以下、「監督署」)がいわゆる“下請たたき”に該当する賃金不払い等のおそれのある事案を把握した場合、公正取引委員会または経済産業省に通報することとしています。

今般、下請事業者における長時間労働についても、その原因が発注者から過酷な納期を強いられたり急な仕様変更があったりすることを受け、上記通報制度が拡充されました。

◆ 通報があるとどうなる?

監督署の立入調査により長時間労働があり、その背景に発注者による買いたたき等があると判断された場合に、経済産業省や公正取引委員会に通報がなされます。

中小企業庁や公正取引委員会により発注者に指導が行われ、それでも改善がない場合は、企業名の公表のほか、罰金の対象となるケースもあります。

◆ インターネットやSNS上の書込みの監視も強化

今般の拡充は、6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえ、長時間労働の是正により誰もが働きやすい環境の実現を目的として行われました。

厚生労働省では、上記拡充のほか、インターネット上で「求人情報」「口コミサイト」、「SNS」等を監視するサイバーパトロールも強化します。

これによりブラック企業に関するキーワードを専用システムで検出し、疑いのある会社は監視員が精査し、所轄の監督署に情報提供がなされます。

◆ トラック運送業、建設業等では取引実態に関する調査も

政府は、今年4月から自動車・同部品産業と建設業の大企業に対して、5月からトラック運送業の大企業に対して調査を実施しました。

その目的は、原材料価格やエネルギーコストの上昇による企業の仕入価格上昇等の取引価格への反映のほか、労働条件等に関する問題の実態把握にあり、業界団体による改善策の検討も始まっています。

今後は、これらの調査により収集された情報に基づいて監督署による調査が行われる可能性もあります。

相談件数が過去最多!「若年性認知症」と就労継続支援

◆ 相談件数が過去最多に

「若年性認知症」に関する電話相談に応じるコールセンターに寄せられた件数(2015年、認知症介護研究・研修大府センター調べ)が、過去最多の2,240件だったことがわかりました。

集計を開始した2010年と比べると約2倍に増加しており、厚生労働省は、患者の支援を強化するため、各都道府県に「若年性認知症支援コーディネーター」の配置を進め、就労継続支援の拡充を行っていく考えです。

◆「若年性認知症」とは?

65歳未満の人が発症する認知症を総称して「若年性認知症」といい、厚生労働省の推計では約4万人の患者がいるとされています。

上記コールセンターに寄せられた相談内容は、「物忘れ」や「今後の不安」が多く、「働きたいが仕事を辞めるよう促されている」といった就労関係も目立っています。

発症年齢の平均は51歳で、働き盛りの現役世代も多いため、今後、就労継続支援の拡充などが課題となっています。

◆ 「若年性認知症支援コーディネーター」とは?

「若年性認知症支援コーディネーター」は、各都道府県に配置され、患者に適した医療機関を紹介したり、障害年金や成年後見制度などの申請手続を補助したりするほか、発症後間もない場合には事業所との勤務調整を行い、職場復帰や再就職などを支援するといったサポートを行うとのことです。

コーディネーターは、医師や精神保健福祉士など、専門の知識を持った人で、きめ細やかな支援体制を整えるために厚生労働省が2016年度から取り組んでいます。

◆ 認知症や支援制度に関する知識を持っておくことが必要

厚生労働省の研究班の生活実態調査(2014年度)によると、就労経験がある1,400人のうち、約8割が「職を失っている」という結果が出ています。また、そのうち約2割は時間短縮や配置転換、通勤などの「配慮がまったくなかった」と回答しています。

自分や周りの人が発症した際に備え、今一度、認知症に関する知識を深め、なおかつ支援制度について知っておく必要があるでしょう。

2016年は猛暑の見込み!「熱中症対策」は万全ですか?

◆ 熱中症による救急搬送者数が急増

2016年の夏は、猛暑となることが予想されています。

5月24日の消防庁の発表によると、5月16日から22日にかけての熱中症による救急搬送者数は全国で688人。前年の同時期は420人で、200人以上も上回る結果となりました。

統計推移を見ても、熱中症による救急搬送者数は毎週増加しています。

ひどい場合には生命の危険もある熱中症。夏本番を迎える前に、対策を講じておくことが大切です。

◆ 熱中症は屋内でも発生する!

熱中症は、夏の強い陽射しの下で作業をするときだけではなく、屋内にいるときでも起こることがあります。

過去の熱中症死亡例について職業別にみると、建設業がその40%を占めていますが、続いて、製造業が約20%を占めていました。屋内の作業であっても、高温多湿の環境で長時間労働すれば熱中症の危険性が高まります。

熱中症は、誰でもかかる可能性がありますが、正しい予防方法を知り、注意しておくことで防ぐことができます。

こまめに水分をとること、大量の汗をかくときは塩分をほどよくとること、気温や湿度を気にかけること、暑さを過度にガマンせず室温を適度に下げることなど、職場で再確認しておくことで、熱中症の発生を予防することができます。

◆ 活用したいWBGT(暑さ指数)

熱中症の原因となる暑さの要素(気温・湿度・輻射熱・気流)を総合的に考慮した指数が、WBGT(湿球黒球温度)です。これが高いときに熱中症が起こりやすいため、労働現場での熱中症対策の目安となります。

熱中症予防の第一歩として、まずは職場のWBGTについて確認してみましょう。

「保活」の実態に関するアンケート調査結果から

◆ 大きな社会問題となっている待機児童

昨今、「待機児童」の問題が新聞やテレビでも頻繁に取り上げられており、大きな社会問題となっています。

このような社会情勢を受けて、厚生労働省では、「『保活』の実態に関する調査」(平成28年4月11日~5月31日意見募集)を行い、4月30日分までの取りまとめを公表しました。

「保活」とは、「子どもを認可保育園等に入れるために保護者が行う活動」のことですが、実態把握のために国が調査に乗り出した形です。

◆ 妊娠中、妊娠前から保活をしている人も

上記調査によると、「保育」を開始した時期に関する質問について「出産後6カ月以降」との回答が最多で23.6%、次いで「出産後6カ月未満」が22.5%となっています。

また、「妊娠中・妊娠前」に開始したとする回答も2割ほどあり、世間的にも、子どもの保育園がなかなか決まらないことに対する不安が広がっていることから、早めの対応を考える人が多いことがわかります。

◆ 職場、仕事との関係

「保活」による苦労・負担として、「職場、仕事との関係」では以下のような声が挙がっています。

・本当に仕事に復帰できるか分からないという不安ある

・保育園に入れなければ職を失ってしまう不安がある

・仕事をしなければ保育園に入れず、保育園に入れなければ仕事に就けないという状況で板挟みにあう

・入園できるか直前までわからないため、会社と職場復帰に向けての具体的な調整ができず、人員配置等で迷惑をかける

◆ 就労条件を変える人も

「保活」の内容として「就労条件を変えた」とする人も一定数おり、時短勤務や在宅勤務に変更したり、派遣社員に雇用形態を変更したりするケースもあるようです。

この「保活」の問題は、育児休業中の従業員を抱えている企業だけでなく、すべての企業にとって無視できない問題となっています。企業のフォロー体制等も含め、実態を把握したうえで検討が必要なところでしょう。

2016-07-23

「働き方改革」の原案が明らかに 政府

 安倍政権の経済対策の目玉として盛り込まれる「働き方改革」の原案が明らかになった。消費押上げのため、最低賃金の3%引上げや雇用保険料の引下げ、女性や高齢者の社会保険料の労使負担軽減といった働き手の所得を増やす項目のほか、残業時間の上限設定、「同一労働同一賃金」や「解雇の金銭解決」導入のような生産性向上を促す項目が盛り込まれた。

2016-07-19

雇用保険料引き下げ 経済対策骨格 財源に特別会計活用

 政府が7月中に取りまとめる経済対策の骨格が14日分かった。企業と従業員が原則折半で負担する雇用保険料を引き下げ、消費を喚起するほか、特別会計の活用で財源を作り「1億総活躍プラン」の関連施策にあてることを検討する。英国の欧州連合(EU)離脱を受けた金融不安を避けるため、地域金融機関を対象とする公的資金注入の申請期限は、平成29年3月から延長する。 続きを読む

2016-07-19

厚労省人事労務マガジン/第70号【2016年7月6日発行】

【2016年7月6日発行】

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         ■ 厚労省人事労務マガジン/第70号 ■

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目次

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【トピックス】

1.10月からスタートする社会保険の適用拡大についての専用ページを開設しました!

2.年次有給休暇を計画的に活用し、夏の休み方を変えよう!

3.従業員のための保育園を設置する際に費用を助成する新たな制度「企業主導型保育事業」が始まりました

  ~助成金の第2次申請を受付中。説明会を各地で開催します~

【厚生労働省からのお知らせ】

◆「中小企業のための育休復帰支援セミナー」を開催します

◆「パワーハラスメント対策取組支援セミナー」を開催します

◆「テレワークセミナー」を開催します

◆中央労働委員会「労使関係セミナー」(関東地区)を開催します

◆平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」応募受付中です

◆7月15日に東京で「第16回 日・EUシンポジウム」を開催します

 ~現代における労使関係の役割について議論~

◆現在の雇用失業情勢
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2016-07-06

6月 ニュースレター

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 ■ 「勤務間インターバル制度」に関する動向

 ■ 見直しが迫られる「内部通報制度」~指針を改正へ

 ■ 「介護職員の精神疾患」急増で対策の見直し

 ■ 平成28年度「年度更新」手続のポイント

 ■ 厚生労働省の支援策で「無期転換ルール」対応は進むか?

 ■ 2017年卒の新卒採用の動向             

 ■ 調査結果にみる「育児と介護のダブルケア」を行う者の就労実態

 ■ 人材不足問題は依然深刻…採用すべき人材を確保するために       

 ■ 自民党が提言した「外国人労働者の受入れ拡大案」の概要

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「勤務間インターバル制度」に関する動向

◆「勤務間インターバル制度」に助成金検討

 厚生労働省が「勤務間インターバル制度(=社員が職場を退社し、翌日出社するまでに一定の時間を空ける制度)」を導入した企業に最大100万円の助成金の支給を検討している、との報道がありました。今月にもまとまる「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれるとのことです。 続きを読む

2016-06-30